先日、V6の岡田准一さん主演の「散り椿」を観てきました。
さすがの木村監督。幻想的でキレイな画面。気が遠くなるように舞う雪。容赦なく降る雨。怖いくらい完成度の高い殺陣。そして満開の椿の大木。
どこをどう見ても美しく切ない。
ああ さすがだ。いい映画を観た。
なんてね。
ええ。本格的なレビューは、ぜひレビューサイトでご確認ください。
本サイトでは どうしても管理人が気になって仕方なかった「散り椿」についての考察をしたいと思います。
ネタバレしないように 花のことだけ書いていきますので 「その解釈&言い回しはちょっと違う」な部分もあるかもですが ご了承くださいね。
椿の花の散り方。椿とさざんかの違い
故郷を追われた岡田准一演じるところの瓜生新兵衛が、妻 篠(麻生久美子)から託されたのが「故郷の散り椿を自分の代わりに見ること」。
ちなみに 木村監督は、セリフを言わずに映像で想いを表現できるような、つまり高倉健をイメージできる俳優として岡田准一を選んだと語っています。
物語が進んでいき、親友(あるいはライバル)の榊原采女(西島秀俊)の家の庭に咲き誇る「散り椿」の前での印象的なシーンが…。
で。
問題は この「散り椿」。
そもそも椿によく似た花で「さざんか」というのがあるんですが、この椿とさざんか。ホントに見分けがつきません。花の時期は さざんかが年末くらい。椿は品種によって晩秋から早春にかけてと幅があります。
でも簡単な見分け方があって
花が終わる時期になると
さざんかは 花びらがバラバラになってくずれる
となっているわけです。
椿の花は花が丸ごとコロリと落ちてくるんです。なので 私など子どもの頃に椿の花を拾っては 椿の花の蜜を吸ったものです。反対に花びらがハラハラと散るのがさざんか。
よく
さざんかは散る
梅はこぼれる
桜は散る
朝顔はしぼむ
などと言い表しますね。
何が言いたいかと言いますと
そもそも 椿って散らないんじゃね?
ってなるんですが。
実は 椿はもともと交配が簡単なので 昔から品種改良も盛んで、椿やさざんかの仲間は世界で6000種以上あるといわれています。変わり咲きの品種もたくさんあります。
そして その中に「花が散る椿」もあるんです。
散り椿の花の名前は?
榊原采女の屋敷として使われたのは 富山県の「豪農の館・内山邸」(国登録有形文化財)です。
その采女の屋敷の庭に信じられないほどに見事に育った大きな椿の木。これはもともと内山邸の裏にあった散り椿の木をクレーン車で運んで 家の表まで移動させて植え付けたものだという事です。但し花の時期と撮影の時期が合わなかったため、椿の花はひとつひとつ手作業でつけていったそうです。
その時に 木村監督は「太陽に向かって咲く花を表現したかった」ので「椿の花を上に向けて付けるように」と指示をしたということです。
映画の中に出てくる散り椿は大輪の何種類もの花が一本の木にこぼれるように咲いていました。白やピンクや絞り咲きなど色々な花が一本の大きな椿の木に咲き乱れているのは不思議でミステリアスな感じがしますね。このように色々な色の花が咲く咲き方を「咲き分け」と言います。
京都のお寺などで知られる「五色八重散り椿(ごしきやえちりつばき)」になります。
散り椿を見るには?
映画の中では見事に咲いていた椿ですが、一般家庭で簡単に植えて何十年もかけて大きくなるまで待って…なんて とても待てませんよね。なので もしも、散り椿をみたい場合は 五色八重散椿を実際に植えている場所に行くというのはどうでしょうか。
散り椿と言えば 別名椿寺として知られる大将軍川端町の地蔵院(正式名称 昆陽山地蔵院)が有名です。
もともとは秀吉の時代からの古木の散り椿があったお寺ですが、一度枯れてしまい、現在の散り椿は二世椿になります。樹齢は約100年の立派な椿の木です。
京都市の指定天然記念物になっていて、見頃は3月下旬ごろです。(花時期は年によって違います)
詳しい情報はこちらから
>>【楽天たびノート】地蔵院 椿寺
終わりに
この作品では、基本的にふすまや障子が開けっ放しで、いかにも寒そうなんですが
木村監督は「昔の人は現代人よりも暑さや寒さに慣れていると思う」ということで、よほど強い風が吹かない限りはふすまや障子を開けっ放しでもおかしくない、そのほうが映像的にも良いししテンポも遅くならない、と言っています。
言われてみれば 確かに、時代劇での過剰な ふすまや障子の開け閉めって なんか無駄な時間のような気もします。
にしても寒そうだなあ、と
極端な冷え症の私は 何度も思った映画でした。
せめて もう少し暖かそうな綿入れとか着せてあげたい。
雪の日に裸足はツライ。せめて病気の人だけでも。
とそこばかりが何度も気になってしまいましたが いらぬ考えですよね。
「散り椿」。雪・雨・竹林・後ろにそびえる山々・山道・良く手入れの行き届いた庭に影を落とす庭木、水の音や鳥の声、そして咲きこぼれる椿の花。ひとつひとつが本当にキレイな映画でした。
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